【おさらい】
ダーマ神殿でデザイナーからカレー屋にジョブチェンジしたものの異業種過ぎてゼロスキルスタート。前職のスキルをこねくり回して「味覚の視覚化」という謎武器で戦いを挑むことにしたんですが…
よくよく考えてみると、武器でも何でもなかった。
これができたからカレーが美味くなるのかというとそういうことではなかった。
そりゃぁそうで、味や香りを自分なりに理解・記録するための俺ルールを編み出しただけで、これで調理技術が上達するわけじゃない。そこは前回も書いたとおり、日々コツコツ訓練するしかないのです。
「体感したことを繊細に感じ取る能力」と
「イメージしたことを繊細に表現する能力」は全く別物ですからね。
学生の頃に散々デッサンをやらされたやったんですが、最初の頃はもう全然描けない。絶望的に描けない。まず形が取れないし質感もイマイチ。構図も変。「円筒の向こう側に空気が回り込む感じ」とか「もっとこうマッスが」とか言われても意味わかんねぇ…という感じでした。
たぶん最初の頃は「見てるようで全然見てない」のと「イメージした通りに腕を動かして線を引くことができていない」との合わせ技で数々の珍デッサンを生み出していたんだと思います。
ひたすら反復練習するうちに質感の差、光の回り込み、図と地、対象以外の空間、量感、流れ、etc.を感覚的に理解できるようになると同時に、それを適切に表現する手法と技術の習得がなされてきます。
いわゆる「基礎造形力」とか「基礎描写力」というやつです。
たぶん、味や香りに関してもこの「基礎造形力」が必要なんだろうなと。
「味覚の視覚化」というトリッキーなインプットをしつつ、「イメージした図形に近づくように調理する」というアウトプットの繰り返しで「カレーの基礎造形力」が鍛えられるように思います。
技術は常に更新や鍛錬が必要なのはどの世界でも一緒で、意識しないとすぐにナマクラになる。オリハルコンのつもりだったけどいつの間にか石ころになってたとか笑えない。
それでもとりあえず地道に続けてれば、これである程度までは上達する。
が、この先にまた問題が。
「感じる」「作る」とはまったく別次元の問題。
それは、
「そもそもお前はその技術でいったい何を作りたいのか」問題。
商品レベルに完成したレシピを「作品」とするならば、いったいどんな作品にしたいのか、お客様をどんな風に楽しませたいのか、どこにその着想を得るのか。これこそが何よりも大切で、お店のコンセプトやら今後の方向性やら全てにつながる根っこの部分になります。
と、煮詰まったところでまた次回。