継続は力

当店のトイレに貼ってある2ページ漫画。

吉田より先生の「星を埋める」。

なんでカレー屋のトイレに漫画が貼ってあるんだろうと思う方もいらっしゃるでしょうが、作者の吉田より先生、当店スタッフでございます。

無名の漫画家なので名前を聞いてもピンとこなくてあたりまえ。

大学卒業後より漫画家を志して数年。紆余曲折あってスローペースで活動してますが、今でもTwitterに時々作品をUPしています。

出会ったのはまだ漫画を描き始めたばかりの頃。

当時の作品を振り返ると、基本的に白かった。線は細く、ベタもほとんどなく、背景もほとんど描いてない。「精神と時の部屋」のような空間。もの作りの極意は「引き算」とも言うけれど、いくらなんでも薄味すぎやしないかい。ちょっとお醤油くれないかね。みたいな感じだったともいます。

私は漫画に詳しい訳でも、自分で描いてるわけでもないんですが、

  • 「起承転結をしっかり」
  • 「画面全体の白黒のボリュームを意識して」
  • 「罫線は奇麗にしっかり描く」
  • 「背景あきらめないで」

みたいな事を言ったような気がします。

要は全体を見る事とディテールを見る事をうまく切り替えながらバランスとったがいいよーと、もの作りにおいてごく一般的な事を言っただけなんですけどね。

そんなこんなで大手出版社に持ち込み、担当さんもついた彼女ですが、描きたいキャラ、描きたいシーンはあるものの、それをストーリーにまとめることが苦手。というかできればやりたくない(おい)。背景もできるだけ描きたくない。霧の中のような設定でなんとか白くできないか(おい)。

描きたい部分のクオリティを上げるためには、それを支えている周辺のクオリティやディテールを上げていかないといけないので、まずはそれを体感するために超短編でも描いてみたら?

という流れで生まれたのが「星を埋める」という作品。

2ページという制限の中で起承転結を作って、残すところ、削るところを明確に。使えるコマが少ないからこそディテールが必要になるし、それぞれの必然性もいる。前後の関係、全体のボリューム、コマに描く密度、ページが少なくてもやる事は膨大にある。

でも2ページなら不慣れでも頑張ればなんとか全体視もできる。

そんな試行錯誤の成果だったりします。

これがきっかけで作品のクオリティはどんどん上がり、本格的な短編の制作にとりかかった吉田より先生。出版…にはまだまだ道のりは長いですが、一本の作品を作り上げられるぐらいにはなりました。当初の「精神と時の部屋」状態の漫画からすれば目覚ましい進歩です。

そんな吉田より先生が描いた短編漫画をTwitterにUPしたところ、本人の想像を遥かに超えてバズリまして。今まで、担当編集者とか私とかごく一部の人にしか公開しておらず、作品を表に出す事をためらう事が多かった先生。鳴り止まぬRT通知。「ちょwwwwおまwwww有名人じゃん」状態。

どんな状態であれ、きちんと作ったものはかならず誰かの心に響くし、作った本人さえ予想しなかった響き方をすることがある。

だから、もの作りが好きなら、作ったものは絶対に公開した方がいい。

向こう三軒両隣に同志はいないかもしれないけど、日本中、世界中に広げれば結構いる。

隣近所の響かない人にむけて作るべきではない。

技術的にどうとか、構成の稚拙さとか、そういう評価軸はもちろんあるけれど、熱意が響く相手はどこかに必ずいる。

まず熱意があって、それを形にするための試行錯誤の中で技術やその他のことがついてくる。

だからもっと自信をもって続けてほしいなーと思う次第です。

あ、ちなみにバズった短編ですが、その後ねとらぼさんで紹介されました♪

http://nlab.itmedia.co.jp/nl/spv/1810/03/news147.htm

感想など、ぜひ吉田より先生に直接リプライしてあげてください。本人が悶絶すると思います。

ちなみに当店トイレ漫画の「星を埋める」、まったく同じ内容ですが今の技術でリメイクされてます。

↓これが

↓こう!

また数年後に同じ内容で描いてみると面白いかも☆

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